月の裏側

2004年12月20日 和書
ISBN:4344402626
書籍形態:文庫
著者:恩田 陸
出版社:幻冬舎
出版年月:2002/08
価格:680円
あらすじ:
九州の水郷箭納倉に住む元大学教授、三隅協一郎が教え子であった塚崎多聞を呼び寄せた。堀割に面した家にすむ老女ばかりが3人も立て続けに失踪し、その後しばらくして何事もなかったかのように家に戻ったという。箭納倉には何やら謎があるらしいが、協一郎は全ての話を一度に話そうとはしない。多聞は彼の会話のペースを乱すことなく、重ねる会話の中で得た情報を少しずつ寄せ集め、彼なりに箭納倉の謎を推理する。そして協一郎の娘藍子と新聞記者高安がこの二人に加わり事件の謎に迫るうちに、とんでもないものの存在に気付いていく。郷愁の水郷が持つノスタルジーと、その背後に感じられるもうひとつの箭納倉。彼等が気付き恐れたものこそが、月の裏側だったのか?

章の頭に登場人物の懐かしい昔の記憶に触れる描写が出てくるんですが、その部分がすごく印象的でした。登場人物の頭の中にあるノスタルジーが、文章を読んでから頭で映像化するのではなく直接映像として頭に浮かび上がる感じで。それから「月の裏側」というタイトルはいくつも意味を持つ気がします。小説で書かれている意味はもちろんだけれど、私は多聞が経験した世界も「月の裏側」だったんじゃないかなぁと思いました。最後にどちらとも解釈できる事実があって、それについていろいろ考えを巡らすのが楽しいです。明解なストーリーでさっぱりとエンディングを迎える話もそれはそれですっきりできるから良いのですが、考えさせられる小説を読むと自分の心がその小説の世界に同調していく気がして面白いですね。同調してエンディングに自然にたどり着く。うーん、同調っていうとなりきるみたいだけど、そうでなくて、その世界に入っていって先行きを眺めている感じなんです。

何も知らないで読んだ方が絶対に面白いって思うから、私もなるべくネタバレしないように書きました。なので話が抽象的で分かりにくかったらごめんなさい。文庫の裏表紙に書かれているあらすじさえも読まない方がいいです。あらすじの知識があったから、最初から何を追っているのか分かってしまいました。一体何を追っているんだろうか、何を恐れているんだろうかを全く知らないことで生まれる緊張感が恐怖や面白さを倍増させると思いました。

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○月の裏側
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