木曜組曲

2004年12月22日 和書
ISBN:4198610932
書籍形態:単行本
著者:恩田 陸
出版社:徳間書店
出版年月:1999/11
価格:¥1,680
あらすじ:
大女流作家重松時子が薬物死を遂げてから4年。時子と近しい関係にある5人の女たちは、時子を偲ぶ意味でも彼女の家で生前から行っていた1年に1度の集まりを続けていた。彼女の死後4年間は、それぞれの心に何かが燻っていたものの口には出せずに終わっていた。が、今回はどこか違っていた。
皆様の罪を忘れないために、、今日この場所に死者のための花を捧げます
とメッセージが添えられた謎の花束が届いたことで、皆の心にあったものがどんどん表に現れた。5人は過去の記憶をひも解くことで、隠されていた事実と時子の死の真実を解き明かしていく。

今まで読んできた恩田陸の作品全てに言える感想だが、人間の闇の部分を表現するのがうまい。あけっぴろげな会話が魅力的であるのはもちろん、人間が抱えている闇だったり秘密を隠したまま交わす、狐の化かし合いのような会話がすばらしい。じりじりと追いつめ、心理的に攻めてくる会話と会話の間は読んでいて心に堪えるーー。

決して語られていないわけではないのに(むしろこの作品では台詞が多く、5人の女がどんどん秘密を告白している)、どういうわけか何かが潜んでいるのではないか?何が隠れているんだろうか?といった、なんとも言えない不安や闇がつきまとう。語られる部分と隠されている事実のバランスが良くとれていて、話に最後まで惹き付けられた。それから物書きの女5人(1人は編集長だが)が時子の館でひたすら飲んだり食べたりしつつ会話をして、真実に近付いていくという設定がやっぱり面白い。死んでしまった時子と5人の微妙な距離感もよかった。

秘密にしていた事柄が明かされるたびに真実が遠ざかっていく気がするのだが、因果の法則だなぁと思った。風呂で読んでいたのだが、ギクッとする箇所が何度もあってかなり恐かった。(この作品に限らず、恩田陸の作品ではいつもギクッとさせられる。)

--------------------------------------
○木曜組曲(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198610932/nekotabihutat-22
○木曜組曲 映画のサイト(http://www.cqn.co.jp/MOKUYO/
映画化されているらしく、サイトを見てみたら女編集長役が加藤登紀子だったのに驚いた。この作品を読みながら他の役柄は特に思い浮かばなかったけれど、編集長役だけは加藤登紀子をイメージして読んでいたから。

コメント