ISBN:4167549034
書籍形体:文庫
著者:宮部 みゆき
出版社:文芸春秋
出版年月:2000/10
価格:900円
あっという間に読むことができて面白かったけど、読後に少々物足りなさを感じた。なんで物足りないって感じるのかをちょっとだけ考えてみた。この小説は文庫本で678ページあるから、ボリュームはある方じゃないかなと思う。二・二六事件やその背景、昭和11年という時代を知らない人間でも、当時の空気を感じられるように描写されている分長くなるのはしょうがないかなぁって気がする。あ、そもそも長いなぁとは思わなかったか。
時代背景とメッセージとストーリーが同じくらいの割合を占めていて、それぞれがちょっとずつになってしまっているのではないかなっていうのは今、無理矢理に捻り出した感想。ですが、確かに不必要な会話は省かれてる感じ。描かれていない会話もなされているって想像はもちろんできるが。
678ページでは足りなかった。きっと長くなり過ぎることを避けるために、無駄をきれいにそぎ落としていったんじゃないかなぁとか勝手に考えてみたり。事件のことや蒲生大将閣下や蒲生家の人々のこと、孝史の家族のこと、蒲生邸のあった場所に建設されたホテルのこと‥もう少しずつ読みたかったかなぁ。
でも‥もしかしたら蒲生大将閣下については、わざと描かなかったのかなとも思う。(二・二六事件が起こる直前とそれ以降がメインというのもあるがそれだけじゃなくて。)彼の子供や他人が彼を語ることで徐々に蒲生憲之像を作り上げていった方が、なんというか、直接的じゃない分おぼろげな印象だけれど、それが強く残るような気もする。それに、話は確かに二・二六事件と密接に関係していて、事件が終わりを迎えるまでの間の話だけど、ストーリーの中心は二・二六事件ではない‥と私は思うから、蒲生憲之については彼の思想や行動が描かれない方が良かったかも。蒲生憲之を描いてしまうと、どうしても話の焦点が二・二六事件に合わさってしまう。彼を取り巻く人間を描くことで彼の人物像が浮かび上がる感じがちょうど良い。絵を描く時、そのものを描かずにまわりを塗りつぶしても、塗らなかった部分がちゃんと形に見えるのににてる。
物足りなさはもっと読みたいという気持ちに起因しているのかな。ストーリーは発想が面白くてきれいにまとまっているなって思ったし、メッセージに関しては似たようなことを思ったことがあって、楽しくいろいろ考えられた。
ドラえもんがはじめてのび太の部屋にきた時に話したことと同じようなことを言っているって思った。(言い方がちょっとちがうけど)
歴史のエネルギーはものすごい力で、その膨大なエネルギーが渦巻く中に人間が存在している。人間一人の向きを変えることはできても、大きなエネルギーの流れは変わらない。それでも、それでも迎えた結末にとても意味があったんだなぁと思う。歴史にとって意味がなくても、その人間にとっては大事なことだったんだ。大事なことはそれぞれ違うけど、自分の大事なものを誇りに生きることの重要さが感じられた。
○蒲生邸事件
(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167549034/nekotabihutat-22)
<HP更新履歴>
・パタリロもの
・物欲メモ
書籍形体:文庫
著者:宮部 みゆき
出版社:文芸春秋
出版年月:2000/10
価格:900円
あっという間に読むことができて面白かったけど、読後に少々物足りなさを感じた。なんで物足りないって感じるのかをちょっとだけ考えてみた。この小説は文庫本で678ページあるから、ボリュームはある方じゃないかなと思う。二・二六事件やその背景、昭和11年という時代を知らない人間でも、当時の空気を感じられるように描写されている分長くなるのはしょうがないかなぁって気がする。あ、そもそも長いなぁとは思わなかったか。
時代背景とメッセージとストーリーが同じくらいの割合を占めていて、それぞれがちょっとずつになってしまっているのではないかなっていうのは今、無理矢理に捻り出した感想。ですが、確かに不必要な会話は省かれてる感じ。描かれていない会話もなされているって想像はもちろんできるが。
678ページでは足りなかった。きっと長くなり過ぎることを避けるために、無駄をきれいにそぎ落としていったんじゃないかなぁとか勝手に考えてみたり。事件のことや蒲生大将閣下や蒲生家の人々のこと、孝史の家族のこと、蒲生邸のあった場所に建設されたホテルのこと‥もう少しずつ読みたかったかなぁ。
でも‥もしかしたら蒲生大将閣下については、わざと描かなかったのかなとも思う。(二・二六事件が起こる直前とそれ以降がメインというのもあるがそれだけじゃなくて。)彼の子供や他人が彼を語ることで徐々に蒲生憲之像を作り上げていった方が、なんというか、直接的じゃない分おぼろげな印象だけれど、それが強く残るような気もする。それに、話は確かに二・二六事件と密接に関係していて、事件が終わりを迎えるまでの間の話だけど、ストーリーの中心は二・二六事件ではない‥と私は思うから、蒲生憲之については彼の思想や行動が描かれない方が良かったかも。蒲生憲之を描いてしまうと、どうしても話の焦点が二・二六事件に合わさってしまう。彼を取り巻く人間を描くことで彼の人物像が浮かび上がる感じがちょうど良い。絵を描く時、そのものを描かずにまわりを塗りつぶしても、塗らなかった部分がちゃんと形に見えるのににてる。
物足りなさはもっと読みたいという気持ちに起因しているのかな。ストーリーは発想が面白くてきれいにまとまっているなって思ったし、メッセージに関しては似たようなことを思ったことがあって、楽しくいろいろ考えられた。
歴史が先か人間が先か。永遠の命題だな。
歴史は自分の行きたいところを目指す
ドラえもんがはじめてのび太の部屋にきた時に話したことと同じようなことを言っているって思った。(言い方がちょっとちがうけど)
歴史のエネルギーはものすごい力で、その膨大なエネルギーが渦巻く中に人間が存在している。人間一人の向きを変えることはできても、大きなエネルギーの流れは変わらない。それでも、それでも迎えた結末にとても意味があったんだなぁと思う。歴史にとって意味がなくても、その人間にとっては大事なことだったんだ。大事なことはそれぞれ違うけど、自分の大事なものを誇りに生きることの重要さが感じられた。
○蒲生邸事件
(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167549034/nekotabihutat-22)
<HP更新履歴>
・パタリロもの
・物欲メモ
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