ISBN:4101369232
書籍形体:文庫
著者:宮部 みゆき
出版社:新潮社
出版年月:2004/06/29
価格900円
読みはじめてまだまもない最初のころに、ドキュメンタリーという手法からか、去年読んだ恩田陸の「Q&A」を思い出しました。「Q&A」も不可解な事件をひも解くべく様々な関係者に事件当時のことをインタビューするというドキュメンタリー的な形式でした(ただ「Q&A」の場合はタイトルどおり、質問と答えの会話だけで成り立っている話でしたが)。インタビューを受ける人の視点で事件が語られるので、一度に全体を把握できません。徐々に皆の発言をもとに読み手が事件像を作り上げていくわけなのですが、その辺が本作品を読むうちに「Q&A」を思い起こさせた理由でしょうね。
核になる事件を中心に事件を取り巻く関係者たちが放射状に点在しています。その放射線状にいる関係者同士は、たとえすぐ近い場所にいても、事件を通してしか繋がらないこともあるんですね。中心の事件から伸びているたくさんの放射線。その放射線の遠い場所から事件までを遡り、放射線状に点在する事件の関係者が事件当時を回想しつつ語っています。はじめはだれに対しての語りなのかは分かりません。ただ分かっているのは、世間を騒がせることになった「荒川区一家四人殺し」の真相が、この語りの先には待ち構えているのだということだけ。様々な関係者が、事件についてまたは事件とは関係ないけれど、事件と同時期に起こっていた自分達の生活や、事件よりも遥か昔のいずれ事件と結びつくことになってしまった出来事について語るうちに、徐々に事件の核心へと近付いていくのです。淡々と語りながら、徐々に事件の核へと近付く様子が読んでいて不気味でした。恐かったといっても良いです。中心の真相は驚くべきところにあると匂わせながら物語は進みます。ある大きな事件が起こったとして、そのときは全く関係のない出来事だと思っていた行動も皆を震撼させた事件への道を進んでいたんだと、後で振り返った時に感じることがあるけれど、みながそうやって「荒川区一家四人殺し」を振り返っているのを読んでいるようでした。あのときにはもう時限爆弾は作動しはじめており、Xdayへのカウントダウンは既に始まっていたのだ、って感じです。私のたとえはちょっと、かなり、わざとらしいですけど。
タイトルの理由。ひとつひとつは少しも関わりを持たないたくさんの理由が重なって、「荒川区一家四人殺し」という大きな事件が起こってしまった理由になったのかもしれません。そういう意味でのタイトルなのかなと思いました。放射線状にいる一見何も共通点がない関係者たちの人生がとても現実的で、なんていうか‥カラフルでした。最初に少し書いたけれど、インタビューなので主観的な話が続いていくわけです。事件に関わった人間の数だけ、事件があるようなそんな感じでした。おなじ事件なのですが、角度によって様々な局面を見せるわけで、面を組み合わせて立体的な形を作ることができます。ひとつひとつの主観的な意見はまるで同じことについて語っているようには見えないのですが、全て組み合わせていくと事件が見えてきて、あぁ同じことを語っているわけなんだな、と分かります。
人が本当に何を考えているかとか、そんなの他人には分かりませんよね。ただ「あの人はああいう人だ」とか「あの人はああいうことをしている」とか他人が見たその人の評価‥というと語弊があるかもしれませんが、その人の一部分を組み合わせて人物像をつくっているわけです。断片と断片を組み合わせて、他人が判断したその人の人物像は、事件のときと同じようにやはり判断した他人の数だけあることになります。そして断片と断片が繋がらないパズルのピースだとしたら、人間は自然と繋がらないピースとピースの間にある絵を想像して埋めてしまうと思います。パズルでしたら、それはほぼ正しいことの方が多いかもしれませんが、もし人物のある一部分と一部分の隙間だったら、それは必ずしも正しいといえなくなるでしょうね。よくワイドショーや週刊誌で取り上げられる信憑性のあまりない話と同じで、想像して埋めた人物像はただの憶測にすぎないのかもしれません。‥というようなことを「理由」を読んで感じました。ある側からみた誰かの行動はとてつもなく突拍子もなく見えて、またある側からみたその誰かの行動にはちゃんと理由があるので分別あるように見えたりするのですね。(理由があればいいってもんじゃーありませんけどね。)
おもしろかった!一番はじめに読んだのが「レベル7」だったのですが、そのときはもしかして文体が合わないかもしれないと思ったんです。でも全然そんなことはなかったですね。
○理由/宮部みゆき
(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101369232/nekotabihutat-22 )
○レベル7/宮部みゆき
(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101369127/nekotabihutat-22)
○Q&A/恩田陸
(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344006232/nekotabihutat-22)
書籍形体:文庫
著者:宮部 みゆき
出版社:新潮社
出版年月:2004/06/29
価格900円
読みはじめてまだまもない最初のころに、ドキュメンタリーという手法からか、去年読んだ恩田陸の「Q&A」を思い出しました。「Q&A」も不可解な事件をひも解くべく様々な関係者に事件当時のことをインタビューするというドキュメンタリー的な形式でした(ただ「Q&A」の場合はタイトルどおり、質問と答えの会話だけで成り立っている話でしたが)。インタビューを受ける人の視点で事件が語られるので、一度に全体を把握できません。徐々に皆の発言をもとに読み手が事件像を作り上げていくわけなのですが、その辺が本作品を読むうちに「Q&A」を思い起こさせた理由でしょうね。
核になる事件を中心に事件を取り巻く関係者たちが放射状に点在しています。その放射線状にいる関係者同士は、たとえすぐ近い場所にいても、事件を通してしか繋がらないこともあるんですね。中心の事件から伸びているたくさんの放射線。その放射線の遠い場所から事件までを遡り、放射線状に点在する事件の関係者が事件当時を回想しつつ語っています。はじめはだれに対しての語りなのかは分かりません。ただ分かっているのは、世間を騒がせることになった「荒川区一家四人殺し」の真相が、この語りの先には待ち構えているのだということだけ。様々な関係者が、事件についてまたは事件とは関係ないけれど、事件と同時期に起こっていた自分達の生活や、事件よりも遥か昔のいずれ事件と結びつくことになってしまった出来事について語るうちに、徐々に事件の核心へと近付いていくのです。淡々と語りながら、徐々に事件の核へと近付く様子が読んでいて不気味でした。恐かったといっても良いです。中心の真相は驚くべきところにあると匂わせながら物語は進みます。ある大きな事件が起こったとして、そのときは全く関係のない出来事だと思っていた行動も皆を震撼させた事件への道を進んでいたんだと、後で振り返った時に感じることがあるけれど、みながそうやって「荒川区一家四人殺し」を振り返っているのを読んでいるようでした。あのときにはもう時限爆弾は作動しはじめており、Xdayへのカウントダウンは既に始まっていたのだ、って感じです。私のたとえはちょっと、かなり、わざとらしいですけど。
タイトルの理由。ひとつひとつは少しも関わりを持たないたくさんの理由が重なって、「荒川区一家四人殺し」という大きな事件が起こってしまった理由になったのかもしれません。そういう意味でのタイトルなのかなと思いました。放射線状にいる一見何も共通点がない関係者たちの人生がとても現実的で、なんていうか‥カラフルでした。最初に少し書いたけれど、インタビューなので主観的な話が続いていくわけです。事件に関わった人間の数だけ、事件があるようなそんな感じでした。おなじ事件なのですが、角度によって様々な局面を見せるわけで、面を組み合わせて立体的な形を作ることができます。ひとつひとつの主観的な意見はまるで同じことについて語っているようには見えないのですが、全て組み合わせていくと事件が見えてきて、あぁ同じことを語っているわけなんだな、と分かります。
人が本当に何を考えているかとか、そんなの他人には分かりませんよね。ただ「あの人はああいう人だ」とか「あの人はああいうことをしている」とか他人が見たその人の評価‥というと語弊があるかもしれませんが、その人の一部分を組み合わせて人物像をつくっているわけです。断片と断片を組み合わせて、他人が判断したその人の人物像は、事件のときと同じようにやはり判断した他人の数だけあることになります。そして断片と断片が繋がらないパズルのピースだとしたら、人間は自然と繋がらないピースとピースの間にある絵を想像して埋めてしまうと思います。パズルでしたら、それはほぼ正しいことの方が多いかもしれませんが、もし人物のある一部分と一部分の隙間だったら、それは必ずしも正しいといえなくなるでしょうね。よくワイドショーや週刊誌で取り上げられる信憑性のあまりない話と同じで、想像して埋めた人物像はただの憶測にすぎないのかもしれません。‥というようなことを「理由」を読んで感じました。ある側からみた誰かの行動はとてつもなく突拍子もなく見えて、またある側からみたその誰かの行動にはちゃんと理由があるので分別あるように見えたりするのですね。(理由があればいいってもんじゃーありませんけどね。)
おもしろかった!一番はじめに読んだのが「レベル7」だったのですが、そのときはもしかして文体が合わないかもしれないと思ったんです。でも全然そんなことはなかったですね。
○理由/宮部みゆき
(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101369232/nekotabihutat-22 )
○レベル7/宮部みゆき
(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101369127/nekotabihutat-22)
○Q&A/恩田陸
(http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344006232/nekotabihutat-22)
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